極真空手を創設した故・大山倍達総帥は、「技は力の中にあり」とい言葉を残しています。
筋力・筋肉と格闘技の関係は、昔から議論の中心になってきました。
筋トレをして余分な筋肉を付けると動きが鈍る。
今ではそんなことを言う指導者も随分減ってきましたが、昔の武道と言われる世界では、そういう考え方が主流でした。
パワー以外の要素、つまり、技術やスタミナ、反射神経、経験などが全く同じ二人の選手がいた場合、パワーのある選手とパワーのない選手、どちらが有利でしょうか?
筋肉量の多い選手は動きが鈍くなるから、パワーの弱い選手の方が有利だと考える人が果たしているでしょうか?
圧倒的パワーは、時に技術や経験をも凌駕することがあります。
だからこそ、ボクシングやキックボクシングにウェイト制があるわけです。
パワーのある選手が力を抜いて打った場合に、相手をKOするようなパンチを打てるのであって、もともとパワーのない選手は力を抜くことさえできません。
脱力と言うのはパワーのある選手が練習によって身につける「技術」です。
矛盾した言い方かもしれませんが、パワーのない選手は脱力するために、まずパワーをつける必要があります。
腕立て伏せを1回もできない人は、どんな技術を身につけてもKOパンチを打つことはできません。
例えば、ストレートパンチを打つ場合、動きとしては、腕を伸ばす動きです。
腕を伸ばすということは、上腕三頭筋を収縮させる事になります。
筋肉ができることは収縮のみです。
筋肉が自らを伸展させることはできません。
上腕三頭筋を収縮させる時に、上腕二頭筋に力が入っていては、力が相殺しあってしまいます。
上腕三頭筋を素早く収縮させながら、上腕二頭筋の力をいかに抜くか。
単純に言えば、これが技術です。
格闘技に限らず、全てのスポーツ、武道、ダンス、そして音楽でさえ、いかに目的の筋肉だけを収縮させ、いかにその動きの邪魔になる筋肉を脱力させるかを練習していくわけです。
熟練された、無駄のない力強い動きというのは、こういうことだと思うのです。
つまり・・・・
ストレートを打つのなら、それに必要な筋力は、強いほうが良いのです。
フックを打つのなら大胸筋のパワーも必要でしょう。
蹴るときには、腸腰筋、大腿四頭筋が強いほど威力のある蹴りが出せます。
そう考えると、無駄な筋肉なんてありません。
瞬間瞬間で、収縮させる筋肉と脱力させる筋肉があるだけです。
だから、腕力も脚力も、三角筋も僧帽筋も広背筋も腹筋も大胸筋も腸腰筋も大殿筋も、全ての筋肉をバランスよく強化していくことが大切です。
インナーマッスルを鍛えようだとか体幹トレーニングをしようという言葉をよく聞きますが、結局それらは筋トレを言い換えただけのものです。
筋肉を付け過ぎたら動きが鈍るなどという勘違いをせず、格闘家なら怪我に注意しながら、思い切り筋トレをしてほしいと思います。